kuppykuppy’s diary

中国語で書かれた羽生結弦選手関連の文章を色々と翻訳しています。速報性皆無のマイペース素人翻訳ですが、よろしければお読み頂ければ嬉しいです。 Twitter:@kuppykuppy2020

「フィギュアスケート界に敵なし 羽生結弦とネイサンチェンが氷上で奏でる二重唱」

周囲の感染者数がかなり減少。時には明るいうちに帰れるようになってきました。これが嵐の前の静けさではないと信じたいです。

 

1ヶ月以上前のものですが、やっとまとめたのでアップします。中国体育報の2021年5月14日の記事です。羽生選手の栄光と苦しみや痛みに触れた良記事。(ただし、北京オリンピックについての考えはご本人にしかわからないことだと思っています。)

王晶 中国体育报 5月14日

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2021年、スウェーデンストックホルムで開催された世界フィギュアスケート選手権での羽生結弦。かつての少年は今や成熟した王者となったが、デビュー当時からひと時たりとも変わらない雰囲気がはっきりと感じられた。カメラの前の彼を見ると、きっと彼もあなたを見てくれているような気がしただろう。

 

新型コロナウイルスの影響で昨年の世界選手権を含む多くの国際大会が相次いで中止になったことで、この度の世界選手権の闘いの激しさは格別なものとなり、大きな注目を集めた。世界選手権の最大の焦点は間違いなくオリンピック2連覇の羽生結弦と世界選手権2連覇のネイサン・チェンの対決であった。ショートプラグラムの羽生結弦の曲は『Let Me Entertain You』。全体の完成度も表現力もほぼ完璧。106.98の高得点で首位に着き、アメリカのスター選手、ネイサン・チェンとの闘いで主導権を握った。一方、ネイサン・チェンは冒頭の4回転ルッツでの思わぬ転倒により少なからぬポイントを失い、得点は98.85点にとどまった。

 

しかしフリースケーティングでは、ネイサン・チェンが高難度かつ完成度の高い素晴らしい演技を見せた。一方の羽生結弦の演技にはいささか緊張が見られ、ミスが相次いだ。最終的にネイサン・チェンに逆転され、彼に世界選手権3連覇の偉業を達成させてしまった。そして自身は第3位。試合終了後の中継の画面には羽生結弦の非常に残念そうな表情が映った。これは決して目指していた結果ではない。26歳の羽生結弦にとってこの銅メダル獲得は実に苦しいものであった。自身の演技に満足はできなかったであろう。しかし、すぐに気持ちを調整した彼は表彰式のカメラの前に現れ、いつものように笑顔をたたえて謙虚で礼儀正しい振る舞いを見せた。どんなに経験を積んでも変わらない一面だ。

 

負けることが大嫌い。喜んで闘いに挑む。ライバルに敬意を払う。ライバルを進化の原動力にする。常に自分の限界を突破して行く。これが羽生結弦フィギュアスケートだ。3月22日にストックホルムに到着して空港に現れた羽生結弦はいつもとは違っていた。彼は慎重にマスクを二重に着けていた。呼吸器系の疾患があるため、羽生結弦感染症予防には特に気を遣っていて、今季のグランプリシリーズは全て出場を辞退した程だ。この世界選手権はコロナ禍において初めて出場する海外試合であった。

 

彼の側にはチームもなければコーチもいない。コロナ禍の影響で羽生結弦は慣れ親しんだクリケットクラブに長らく帰れないでいる。コーチと連絡が取れるのはインターネットのみで、ほとんどの時間は日本で1人で練習するしかない。こんな状況はデビュー以来ほぼなかったであろう。練習の期間は長くなるばかり。身体にも心にも非常に大きな負担がかかる。この期間、家族と過ごす以外には羽生結弦は外出もほぼしていない。彼の世界にスケート以外にあるのは、やはりスケート。スケートだけなのだ。

 

体調の問題とコロナ禍の関係で、羽生結弦は今年のグランプリシリーズの日本大会には出場しなかった。全日本選手権羽生結弦の今季初試合であり、昨年2月の四大陸選手権以来初めて姿を現す公の場となった。試合での総合得点は319.36点で、2012年から2015年の4連覇に次ぐ5度目の優勝を果たした。また、これにより彼は2022年の北京オリンピック出場資格を争う試合、ストックホルム世界選手権の入場券を手にしたのであった。

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26歳と言えば血気盛んなアスリートにとって最盛期かも知れないが、技術と美の完全なる融合が求められるフィギュアスケートにおいては、引退して別の華やかなステップに進んでもおかしくない年齢だ。氷の上で高難度のスピンやジャンプを一つまた一つと見せることは、その度に足首に体重をはるかに上回る負担がかかることをも意味する。

 

しかしこれまでの長年の現役生活でも、羽生結弦に苦難や葛藤がなかったわけではない。夜明け前の暗い闇の中、投げ出したいと思うこともあった。その痛みはまるで手で触れることができるかのようにリアルに感じられた。この度の世界選手権は羽生結弦にとって完璧なものではなかったが、彼は再び困難に立ち向かい挑戦することを選んだ。

 

フィギュアスケートの国際大会で羽生結弦が明らかに特別な存在である。それは何よりその栄誉に現れている。

 

ソチオリンピック羽生結弦はアジア男子シングル選手として初の金メダルを獲得し、平昌オリンピックでは男子シングルを連覇した史上2人目の選手となった。これだけでなく羽生結弦は他にも沢山の世界記録を保持している。

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去年の2月に韓国のソウルで開催された四大陸選手権羽生結弦は299.42点の総合得点で初優勝を果たした。そしてこの優勝により、彼はオリンピック、世界選手権、グランプリファイナル、四大陸選手権等の世界大会のタイトルを制覇したスーパースラム達成者の称号を得た。ISUが去年フィギュアスケート分野で抜きん出た選手やコーチなどを表彰するために創設した年間アワードにおいて最優秀選手賞を受賞した羽生結弦は述べた。「僕は毎日のほとんどの時間フィギュアスケートのことを考え続けているし、より上手く強くなりたいと望んでいます。毎日を昨日できなかったことをできるようにするため、より高みを目指すことに費やしています。」ISUが公開した選手のプロフィールを見ると、羽生結弦の趣味は「無し」。彼の眼中にあるのはきっとフィギュアスケートだけなのだ。

  

ずば抜けた成績、高難度の技、優雅な動き、美しい容姿、これが羽生結弦のトレードマークだ。世界各地に数えきれないファンを生み、世界の全てをホームグラウンドにしている。ただし、この時の彼に関するワードは「優勝」ではなかった。4月17日、日本の大阪、2021年世界国別対抗戦の会場で羽生結弦はまたしても何度も4回転アクセルに挑戦した。何度転ぼうとも、ひたすら観客に前人未到の4Aを見せたいがために。羽生結弦の絶えず壁を破り完璧を追い求めようとする執念はファンの心を動かす。

 

現在、羽生結弦より5歳下のネイサンチェンが正にピーク状態にあり、北京オリンピックのこの種目の一番の本命であると言っても過言ではない。そして世界選手権で銀メダルを獲得した日本の若手スター選手、鍵山優真のことも軽視できない。しかし、羽生結弦はかつて語った。「自分の漫画はまだ完結していない。」彼は2022年の北京オリンピックに出場し、愛するファンたちに素晴らしい演技を見せたいと思っているのだ。

 

ISUのプロフィールの件は世界選手権のショートの解説で、中国CCTVの陳滢さんも言及されていました。

「ISUが公開している選手プロフィールの趣味の項目に“無し”と記載されている唯一の選手。

彼はまるで演技狂。物事は熱狂があってこそ成し遂げられる。他の選手にはそれぞれ色々な趣味がありますが、彼にあるのはひたすら練習と試合。それが彼の全てなのです。」

(個人的には趣味の世界も楽しんでいて欲しいと思ってます。ゲームや音楽鑑賞やイヤホンで癒されることが本業にも活かされているはずですよね!)