kuppykuppy’s diary

中国語で書かれた羽生結弦選手関連の文章を色々と翻訳しています。速報性皆無のマイペース素人翻訳ですが、よろしければお読み頂ければ嬉しいです。 Twitter:@kuppykuppy2020

人民日報体育の記事「羽生結弦:僕の漫画はまだ終わらない」③

(翻訳)人民日報体育の記事「羽生結弦:僕の漫画はまだ終わらない」② - kuppykuppy’s diaryの続きです。これにて完結!

少し事実と違うのでは?と思う部分がありましたがそのまま訳しています。

 


執筆 季芳
人民日報体育 8月26日

平昌オリンピックまであと3ヶ月余りとなった頃、羽生結弦は練習中に怪我をしてしまい、その後の試合を全て欠場。94日間の沈黙の後、松葉杖が必要な程の大怪我をしていた彼が何と帰って来た。男子シングルのフィギュアスケート選手として66年ぶりにオリンピック連覇という奇跡を実現したその完璧な身体の動きは羽生結弦の人生哲学を物語っていた。

「出来なかったら、出来るまでやる。出来るようになったら、完璧に出来るまでやる。完璧に出来るようになったら、何度でも、完璧に出来るまでやる。」

こう評した人がいる。:羽生結弦フィギュアスケートのために生まれてきた人。彼の勝利への執念は生涯に渡って極限に挑み、究極を追求し続けるという宣言。つまりは「過去の自分は越えるためにある」ということ。

 

——人生を楽にすることはできないから、自分がもっと強くなるしかない。——

試合会場での羽生結弦は非常に強気だ。「勝たないと意味が無い。」こんな発言はいつものこと。しかしリンクを下りた彼は謙虚で感謝の気持ちに溢れ、年齢以上に成熟し、自らを律することができる人物だ。

 

2014年の衝突事件の後、羽生結弦は閻涵をあちこち探し回った。怪我の具合を尋ねたかったのだ。平昌では日本の選手、宇野昌磨が取材を受けている際、地面を這いカメラを避けてそっと移動した。取材の画面に映り込まないために。平昌オリンピックの最終結果が出た時、彼の最初の反応は自分の連覇への喜びではなく、惜しくもメダルを逃した中国の選手、金博洋への抱擁であった……

 

(写真のキャプション)仲間が取材を受けているのを見て、羽生結弦は地面を這ってそっと移動した。

競技成績から言えば、これまでの功績の上に胡座をかく資格が彼には十分ある。10回以上世界記録を破り、フィギュアスケートの歴史上初めてオリンピック、世界選手権、グランプリファイナル、四大陸選手権、そしてジュニア世界選手権、ジュニアグランプリファイナル等の国際大会を制覇してスーパースラムを達成した選手がどれだけ褒め称えられようとも行き過ぎではないだろう。

 

しかし羽生結弦がこの氷上の芸術にもたらしたものは競技の金メダルだけではない。CCTVの解説者、陳滢はかつて語った。「彼は私たちに証明してくれた。フィギュアスケートの力は氷上に客観的な世界を描くことではなく、人間の心の内なる世界を描くことだということを。この種目の魅力と吸引力は観客の共感を呼び起こす力にこそあるということを。」

 

ある意味、羽生結弦の成功の理由は負けず嫌いな精神だけではなく畏敬の念にあると言えるのかもしれない。「スケート靴さえ履けば、何も怖いものはない。」彼はブレードに敬意を込めて自分の名前と一片の羽を刻み、自らの運命とこの種目を深く深く結び付けている。早々と頂点に上り詰めた彼が未だにいつも考えているのは「もっと出来ることがある筈だ。」ということだ。

 

平昌オリンピック前のたった3ヶ月間の療養期間中、彼は自分で解剖学等を学び、自分に合ったリハビリとトレーニングの計画を立てた。音楽と演技をぴたりと融合させるために自分で曲の編集をしたこともある。

 

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2020年国際スケート連盟の年間表彰において羽生結弦は最優秀選手賞を受賞。彼の数々の演技は既にバイブルだ。

 

何度も転んでは起き上がり、何度も同じ動きを繰り返す。純粋な心があってこそ永遠の美は刻まれる。既にフィギュアスケートの名演技となった《晴明》の原曲は映画《陰陽師》のサウンドトラックだ。羽生は編曲者と共に新しい曲を編成した。修正した回数は30回を超え、「まるで一つ一つの音符が彼に染まっているかのようだ。」と言われる曲が完成。そして自身がその世界に入りやすいように、彼は曲の冒頭に約1秒、自分の呼気を録音した。


ある人は言う。羽生結弦がこれまでに得た成果は18年に渡る「自殺式」と言えるトレーニングの賜物だと。しかし実は彼は苦しみと挫折で鎧と兜を作り、少年のような勇ましさで前進し、何も顧みず突っ走って来たのだ。

 

(写真のキャプション)熊のプーが好きなこの少年を愛さずにいられようか。

羽生結弦の演技が終わると、現地にはいつも「熊のプー」の雨が降る。2011年に日本で起こった大地震。ちょうどリンクで練習をしていた羽生はリンクに閉じ込められそうになり、年上の先輩を頼って脱出した。その先輩は彼を励ますために熊のプーのティッシュケースをプレゼントしてくれた。(←これは違いますよね?)それ以来熊のプーは羽生の大切なキャラクターとなり、いつも彼に困難な事や未知の事に向き合う勇気と力をくれている。

 

「僕らは真っ暗な状態で全然立ち直れなかったにも関わらず星がすごく輝いていたから、希望の光じゃないですけれど、そう言ったことは感じていましたね。」死を身近に感じた日々は羽生の人生に深い爪痕を残したが、心の中に灯った星たちが、彼の行く手を照らし続けている。

「人生を楽にすることはできないから、自分がもっと強くなるしかない。」羽生結弦は幾度となく自分に語りかけてきた。自分はフィギュアスケートなしでは生きられないのだと。

 

昨年グーグルが発表した2019年の年間まとめ動画《Year in Search 2019》のテーマは「英雄」。動画の中には羽生結弦の姿があった。彼は一体どんな英雄なのか?「飛翔」への思いをいつまでも持ち続ける心…答えはもうおわかりであろう。

(完)

 

最後は北京オリンピックについての思いが語られるのかと予想していたのですが、最後まで羽生選手への賞賛の言葉で終わっていました。

輝かしい功績の陰にある汗と涙に焦点を合わせて綴られた暖かくも熱い怒涛の長文記事でした。所々に引用されている詩のフレーズも素敵だったなあ。雰囲気がお伝えできているといいのですが…

 

コメント欄から抜粋
🐮goatと言われ、この種目に多大な影響を与えてくれる選手が存在するのに、残念なことにISUによるルールと不当な採点がこの競技を侮辱しているのよね。

 

🐮誰かが書いていたのを思い出した。「自分は彼のように何かに全力で取り組んだことが全くない。ただ人生を過ごしている私は彼の前ではただの偽物。恥ずかしくて震える。生きるとはどんなことかを教えてくれてありがとう。どんな奇跡よりも正しくて尊いもの、それは最後までやり抜くこと。初志を貫くこと。」


🐮「少女漫画のような顔なのに、生き方は熱血漫画。」熱血漫画でもこんなストーリーはないでしょうね。彼の経験してきた起伏が激しい人生、信じられないような道のり。普通の人間には想像もできない。

🐮これまで人生とお付き合いしてきた中で、羽生は私の最大の光です。

🐮「か細くてクールな少年のような身体の中に秘められた強靭で逞しい心。」さすが人民日報…「宿題」がしっかりできました。必要なポイントがうまくまとめられています。心のこもった文章をありがとうございます。

 

🐮羽生結弦!私ができなかった熊のプー投げ、必ずリベンジするからね!

 

🐮限界なんてないかのように未知の領域に挑み、息を呑むような進化を続ける。信念を守るために一生懸命な人。Respectしています。

🐮北京であなたに会えること、あなたにこれまでで一番盛大なプーの雨をプレゼントできることを願っています。

🐮他国のアスリートのファンになるなんて思ってもいなかった。柚子は私の知る中で一番純粋な人。功名心や利益のためではなく、熱愛するもののために生きる人。柚子のために人民日報さんをフォローしたよ。ははは。

🐮この世に何でこんなすばらしい人が存在するの!

🐮羽生結弦はcwwで観客やファンに「ありがとう」と叫んでくれたけど、お礼を言うべきなのは私の方です。ありがとう、やめないでくれて。ありがとう、続けてくれて。アジアの選手に圧力がかかり、あからさまに点数が下げられる状況でも諦めない彼。暗闇の中に道を開き、人々の前に姿を現わす人。一番苦しかった頃の私に努力とは何か、負けないこととはどんなことかを教えてくれた。桃の花のように美しいあなたに出会えたお陰で、これからの曲がりくねった道のりは春の暖かさに満ちるでしょう。

 

↑最後のはCCTVの陳滢アナウンサーも実況の時に引用して語っていたフレーズですね。これも大好きです。