ちょっと前の記事ですが、BAZZARの微信（WeChat）の映画アカウントで発信された中国版陰陽師の映画に関する文章です。
羽生さんに言及した部分は少ないのですが、個人的に興味のある内容なので翻訳させていただきました。
Zoey 芭莎电影 4月26日
最近郭敬明は忙しそうです。
バラエティー番組「創造営2020」の主題歌の作詞について公式発表を行ったばかりか、別のオーディション番組「少年之名」では教官を務めるとのこと。
そして８ヶ月をかけて撮影した映画「陰陽師晴雅集」「陰陽師瀧夜曲」のクランクアップの写真も公開されました。
それだけでなく郭敬明は微博で２作の映画の舞台裏の写真も公開しました。拡大してお目当てを見つけ出さないといけない系の写真です。
それから彼が主役の趙又廷（マークチャオ）と鄧倫とそれぞれ撮ったツーショット。この２人はそれぞれの映画で主役である晴明と博雅を演じています。「陰陽師博雅集」は鄧倫の映画初出演作品になります。
郭敬明のこの２作の新しい映画はどちらも日本の小説家の夢枕獏の「陰陽師」をアレンジしたもの。夢枕獏は日本の伝奇小説の大家で、陳凱歌の「妖猫伝」の原作も彼の小説です。
彼の著作「陰陽師」は日本の民間伝承をベースに、日本の平安時代の人と魔が共存する神秘的な世界を次々と起こる不思議な出来事を通して描いています。
物語の主人公は安倍晴明（陰陽師）と源博雅（武士）（訳者注:博雅は武士ではなく殿上人ですが原文のまま）。２人で聖と俗を補い合い、協力し合って巷の恐ろしい謎を解決してゆきます。
郭敬明は2016年に版権を取得し、原作の枠組みをベースに、物語の背景を中国に移した全く新しいバージョンを作り上げました。それが「陰陽師博雅集」と「陰陽師瀧夜曲」です。
この２作は晴明が師匠の遺言を守るため、博雅と諍いながらも友情を深めつつ２人で力を合わせて不思議な事件を解決し、人々を救うという物語です。
物語の背景や登場人物の名前がどう変わったとしても「陰陽師」の一番のキーパーソンはやはり安倍晴明。全ての人物や事件の手がかりは彼によって繋がって行きます。
「陰陽師」の原作者である夢枕獏さんはBAZAARの取材の際、これまでに安倍晴明を演じた人物の中で一番満足しているのは野村萬斎と羽生結弦であると語りました。
更には「野村萬斎さんは唯一無二の方。作品が映画化されることになった時、私が自ら『萬斎さんにやっていただきたい』と希望したのです。」と話しました。
そして野村萬斎が演じた安倍晴明は原作ファンからこれまでで一番の好評を得ました。３歳から舞台に上がっていた彼の演技にはしっかりとした基礎と厚みがあります。
眼差しから放つ自由奔放さと高潔さ。そして気怠そうに横たわったりも。
世事にとらわれず超然としてシニカルに世の中を見る。そして邪な輩は蔑む。まるで仙人のような佇まいです。
作品中の晴明の邸宅で、安倍晴明は半身を横たえ、視線を移ろわせます。柔らかいのに力強いオーラ。そのバランスは絶妙です。
野村萬斎は、キャラクターを自分のものにしたと言えるでしょう。この狡猾な冷静さ、右に出る者はいないかも知れません。
このバージョンの「陰陽師」で私が強い印象を受けたのは梅原茂さんの音楽です。ストーリーの展開、悲しみや嘆き、盛り上がりにぴったりと合っていて、この映画の雰囲気に非常にマッチしていました。
梅原茂は日本の有名な作曲家で、我が国の映画ファンからすれば外せないのは「花様年華」の中で梁朝偉（トニーレオン）が演じた周慕の為に作曲された「Yimeji's Theme」です。
彼の作風と王家衛（ウォンカーウァイ）の作品との相乗効果により、「2046」「グランドマスター」の２度に渡り彼の音楽が香港映画金像賞の最優秀映画音楽賞を受賞しています。
夢枕獏が認めたもう１人の「安倍晴明」は日本のフィギュアスケート選手の羽生結弦です。
彼のフリースケーティングのプログラムの「SEIMEI」には梅原茂さんが2001年の「陰陽師」のために作曲した「陰陽師・メインテーマ」が使用されています。
羽生結弦 は「漫画の中から出てきた氷上の貴公子」と呼ばれ、氷上で演技する姿に「顔かたちは玉（ぎょく）の如し その姿は松の如し 雁が跳ぶかのような軽やかさ 龍が動き回るかのようなしなやかさ」と賞賛を受けています。
羽生結弦と野村萬斎と言えば、共通点は禁欲的な雰囲気と魅惑的な雰囲気を兼ね備えた外見。この特性は安倍晴明を演じるにはこの上なくふさわしいものです。
この度の中国版「陰陽師」では安倍晴明、つまり「晴明」の役を趙又廷（マークチャオ）が演じています。
ポスターを見ていると、この度趙又延（マークチャオ）が演じている安倍晴明は野村萬斎のものと幾分似ているようですが、毅然とした正義感が更に強めで、狡猾さや人を惑わす雰囲気は控えめなように見えます。
ポスターを見るだけでは何も語れませんが、趙又廷（マークチャオ）の演技力はやはり一目瞭然です。私がよく覚えているのはドラマ「深夜食堂」（2017）の「 整形レベルの演技」に滅茶苦茶泣かされたこと。
楊羃（ヤンミー）と共演した時代劇「三生三世十里桃花」（2017)では、最初は彼の長髪の扮装に拒否反応を示す視聴者が多かったのですが、話が展開するにつれて受け入れる人がどんどん増えて行きました。
夢枕獏に中国版「陰陽師」についての思いを聞いてみたところ、「晴明などを演じる俳優の写真は見ましたが、撮影現場には行っていないのでどんな演技をされるのかわからない。一層期待が募ります。」とのこと。
「陰陽師」は幻想的で不思議な出来事を扱っていますが、妖の存在と人間の秘めた欲望とが関連づけて描かれていて、駆け引きの中に人の情の冷たさや温かさが語られています。人間の本性、これこそが作品のテーマ。人物を撮ることに長けた郭監督がこの新しい物語をどのように紡いでいるのかが楽しみです。
