24時間テレビの「春よ、来い」について、ファンの方(抻面鸡架yuzuさん)が書かれた文章を翻訳しました。
日本では「春ちゃん」でおなじみの「春よ、来い」ですが、こちらでは「桜ちゃん」と書かれていますので、そのまま訳しています。
https://mt.mbd.baidu.com/r4ve2aq?f=cp&u=cb14d612c107fddf
もしも「美」を形にできるなら…
もしも「慈しみ」を体現できるなら…
もしも「春」の心を代弁できるなら…
これらの全ての問いに対する答えが、羽生結弦選手が演じた「春よ、来い」です。
2018年9月、日本の北海道胆振地区東部で震度7の大地震が発生し、地震による土砂崩れがこの地域に大きな被害をもたらしました。44人の方々が亡くなり、道路や農地、住宅も破壊されたのです。
1年後の2019年6月、テレビ番組「24時間テレビ」が北海道地震の被災地を取り上げ、羽生結弦選手が被災地の人々の心に春をもたらしました。
それは2019年の世界選手権の試合の後に再び姿を現した桜ちゃん。つまり羽生結弦選手と、この曲を作った松任谷由実氏、ピアニストの清塚信也氏との初めてのコラボレーション作品である「春よ、来い」です。私たちは2019年のさいたまワールドの後、彼がスケートへの情熱と勇気を全て注いで演じた「春よ、来い」が、比類のない美しい演技だと思いました。
それなのに、北海道の被災地で、この上ない悲しみと慈しみを湛えた桜ちゃんが、また人々を感動ですすり泣かせてくれることになろうとは。
音楽が間奏に入ると、彼は真っ暗なリンクに登場しました。まるで地震のあったあの夜、真っ黒な夜空に明るく煌めいていた星たちのように。
ライトが灯り、ピアノの音が響き始めると、この春最初の桜の樹の蕾が力強くほころび始めます…
1994年、この「春よ、来い」は誕生しました。羽生結弦選手が生まれたのと同じ年に。
お母さんのお腹の中でいつもこの曲を聞いていた羽生結弦。ただただお姉さんの背中を追いかけてリンクに上がった頃には、自分自身がフィギュアスケートとこの曲とこの世界との間にこんなにも深く美しい縁を結ぶことになることを、まだ知りませんでした…
この曲は阪神大震災、東日本大地震、そしてこの北海道胆振東部地震で被災した数え切れない人たちの心を癒し、励まして来ました。
そして、ただスケートが楽しくて滑っていたあの少年は苦しみと悲しみを経験し、その身に背負うことになってしまいました。そして申し訳なさ、無力感、迷いなど様々なものを乗り越え、沢山の人に力と勇気をもたらすことのできる青年に成長したのです。
時を渡る長い川を旅する時、困難に直面した人たちはお互い寄り添い合い支え合って前に進み続けます。この曲には、災難や苦しみに見舞われた人たちが勇敢に前に進もうとする様が描かれています。
高く険しい山を登り、一つまた一つと挑戦を続けるうちに「滑るだけでは何もできない」と言っていた彼は、滑るだけで沢山の人を力付け励ますことができるようになりました。その演技には彼が自分と向き合い自分への挑戦を続けて来た年月が濃縮されています…
「できる限り自分の力を尽くしたい。」このプログラムの背後にあったのが、彼のそんな気持ちです。
その気持ちは被災地だけではなく沢山の人の心に届きました。
以前に試合会場に現れた「春よ、来い」が美しさと技術の究極の饗宴だと言うならば、昨晩「24時間テレビ」に現れた「春よ、来い」は、希望と未来を感じさせてくれる心のマッサージ…
彼が顔を上げて空中を見つめた時、あなたは何を思いましたか?何が見えましたか?
まるで時間が止まったようなその瞬間、宮崎駿さんが描いた列車が海の上を疾走するように様々な思いがよぎり、そしてぱっと現れたものは、何と悲しくて何と暖かくて…
天と地の大いなるを知りし者、草木の青さを慈しむ。(訳者注:思想家の詩からの引用のようです)
少年時代に天災の当事者となった心優しい人がその記憶を消し去ることは生涯できないでしょう。
羽生結弦選手のエキシビションのプログラムに込められた、世の苦しみを嘆き人の痛みにより添う思いは、年を追うごとにより厚く、より深くなっています。それは昨晩のこの「春よ、来い」でも余すところなく伝えられ、私たちはまるで天からのメッセージを受け取ったかのような気持ちになりました。
昨夜の演技が終わった後、リンクの端に立った彼の瞳は涙ぐんでいました。「僕自身もすごく心を込めて滑りました。皆さんにとっても、何か前を向いて歩けるような、そんな春が来るようにと思って滑ることができました。ありがとうございます。」
偉大な人は自分の偉大さを語ったりはしません。
彼はただ私たちに、愛と希望、美しさと清らかさを形にして見せてくれます。それは決して桜色をした一夜限りの夢などではありません。寒い夜や北風の吹く日がどれだけ続いたとしても、必ずやってくる暖かい春なのです。