kuppykuppy’s diary

中国語で書かれた羽生結弦選手関連の文章を色々と翻訳しています。速報性皆無のマイペース素人翻訳ですが、よろしければお読み頂ければ嬉しいです。 Twitter:@kuppykuppy2020

どうして誰もが羽生結弦を好きになるのか?①

グランプリファイナル後の2019年12月21日の体育大生意の記事。

現地で取材した記者によって綴られた長文です。特に新しい情報はありませんが、良記事だと思ったのでご紹介します。長いのでまずは途中まで。

郭福瑞

体育大生意の記者がイタリアトリノより発信

 

フリーの演技《origin》の曲が鳴り止んだばかりのトリノのパラベラ体育館。四方八方のスタンドからファンたちが興奮を抑え切れない様子で、手に持っている熊のプーのぬいぐるみをリンク中央に向かって投げ入れる。まるで雨のように次々と降り注ぐ熊のプーたちは、真っ白な氷の上を彩る壮大な光景となり、そして賛美と敬愛の念となり、氷上で舞った天才少年ーー羽生結弦に惜しみなく捧げられた。

 

この光景が見られたのは北京時間12月7日の夜。2019年グランプリファイナルの会場であった。この日は羽生結弦の25歳の誕生日。しかし誕生日の夜は彼に良い運気をもたらしてはくれなかった。コンディションが万全ではなかった彼はフリーの演技でミスをし、194.00点、合計点数は297.43点で第2位。残念ながら優勝を逃してしまった。


だがパラベラ体育館は羽生結弦のただならぬ魅力に支配されていた。客席を見上げると、そこかしこに応援バナーがはためき、熊のプーのぬいぐるみが見える。熊のプーに扮して応援に来ていた人さえもいた。演技中にはファンたちが音楽のリズムに合わせて手拍子で応援し、彼の出場と退場の際には毎回、山が叫び海が吠えるかのようなどよめきが起こり、ドームの天井を突き破るのではないかと思うほど。そして会場から遥かに遠い中国でも、試合終了後に大勢のファンたちが微博で嘆き始め、#羽生結弦に心を痛める#のトピックスの閲覧数はすぐに1億を突破し、人気検索ワードの上位に登場した。

 

これらを見ていると、まるで羽生結弦は全世界の人をファンにし、彼を好きでない人などおらず、彼の演技の虜にならない人はいないのではないかという気がしてくる。あなたは不思議に思うのではないだろうか。これは一体どうしてなのか?どうして誰もが羽生結弦を好きになるのか?

 

才能に惹かれ、顔面偏差値に落ち、人間性について行く

 

これについては熱心なファンが総括したこの言葉がこれ以上なく的確だ。「才能に惹かれ、顔面偏差値に落ち、人間性について行く。」これこそまさに人々が彼を好きになる理由。

 

多くの人が羽生結弦を知ったのは2014年のソチオリンピックであった。当時弱冠19歳の彼は《ロミオとジュリエット》で会場を燃え上がらせ、日本の歴史上初めてフィギュアスケート男子個人種目の金メダルを獲得した。この試合を通して彼の美しいスタイル、上品な雰囲気、そして芸術と技術を見事に融和させた表現力が多くの人の知るところとなり、人々はこの才能溢れ気概に満ちた天才少年に注目し始めた。その頃日本で行われた「王子様のような有名人」と言うアンケートで、羽生結弦は数多のアイドルを抑え、大差で1位の座に着いた。


その1年は、羽生結弦フィギュアスケートという種目を「支配」し始めた年でもあった。彼は表彰台の常連となり始め、グランプリファイナル、世界選手権、オリンピックと何度も優勝を重ねた。そして揺るぎない実力で、ショートプ、フリー、総合得点のそれぞれで、何度も世界記録を樹立した。羽生はまるで開拓者のようにフィギュアスケートの新しい境地を切り開き、後に続く者たちは彼を超えることを目標に努力している。現在絶好調のネイサンチェンも羽生は追いかける対象であり、前進の原動力であると率直に語っている。

 

羽生がファンを増やしたもう一つの出来事は昨年の平昌オリンピックだ。右足関節外側靭帯を損傷し、平昌オリンピック前の3ヶ月は試合に出場できない空白期間となってしまったが、彼の連覇への思いは極めて強いものであった。ソチオリンピックではフリーの演技でミスをしてしまったことで、メディアに事あるごとに「転んでも金メダル」と皮肉られた。その後の4年間、その言葉は喉に刺さった魚の骨のように、羽生の心に引っかかっていた。世間が不安視する中、羽生が毅然として決然として選択したのはぶっつけ本番で平昌オリンピックに臨むこと。人々はその度胸と気魄と自信に敬服せずにいられなかった。

 

腕に自信のある人は度胸が据わっていると言われる通り、羽生はまずほぼ完璧なテクニックと表現力でショート、ショパンの《バラード第一番》を演じ、続くフリーでもまた質の高い演技を見せた。しなやかなで上品な佇まいと見る者を引き込む演技力で滑った《SEIMEIは、プラグラム全体を通してほぼ完璧。羽生結弦は総合得点317.85で再び金メダルを獲得し、オリンピック連覇を成し遂げた。66年の時を経て、冬季オリンピックの歴史上2人目のフィギュアスケート男子シングル種目での連覇達成者が誕生した。多くの人がこの時の文句のつけようのない演技を見て、まるで伝説のようなこの少年に惚れ込んだ。

 

そしてファン、特に女性ファンを更に夢中にさせるのが羽生の美しい容姿だ。すらりとしたスタイル、透き通るように白い肌、萌えさせてくれる事この上ない顔付き。彼が氷上を舞う時、これらの長所と彼のテクニックと芸術的な表現力が一体となり、人を強く惹きつけ酔い痴れさせる。羽生はまるでアニメの中の美男子であり、「氷上の王子」。多くの人の夢の中の恋人である。


ファンたちがずっと応援を続ける最終的な理由はもちろん彼の人間性にある。平昌オリンピックの時、一枚の興味深い写真がネット上で話題になった。日本代表のチームメイトである宇野昌磨が練習後に取材を受けている際、通りかかった羽生結弦は取材の邪魔にならないようにそっと後方を這って移動したのだ。この振る舞いに賞賛の声が次々と巻き起こり、多くの人が羽生結弦の礼儀正しさを褒め称えた。

 

この度のグランプリファイナルでは羽生結弦のフレンドリーな一面も見られた。羽生は彼に多大なプレッシャーを与えている後進の選手ネイサンチェンと100パーセントの力を出してリンクで競ったが、リンクを降りた後には敵意は一切感じられないゆったりと落ち着いた態度と貴族のような風格を見せた。19歳のネイサンチェンは25歳の羽生結弦をスケート人生の中で追いつき追い越したい目標であると語り、羽生結弦はインタビューでネイサンチェンの技術レベルや動きは完璧、ジャンプもスピンも安定していて音感も卓越していると褒め称えた上、「彼は自分の練習における目標だ」と絶賛した。

 

試合後の表彰式では羽生は笑みを浮かべ、両手を高く上げて表彰台の一番高い所に立つネイサンチェンに絶え間なく拍手を送った。そうすることで現地のファンたちにもこの将来有望な新星に喝采を送るよう促し、後輩を大いに激励したのだ。その瞬間の羽生結弦はまるで、紅い花のようなコートを脱ぎ捨て、オリンピック連覇者などの数々の肩書きを忘れ去って草木になることに徹し、素晴らしい演技をした後輩に敬愛の念を伝えているように見えた。そしてこの場面を見たファンたちは心の中で彼への尊敬の念を一層深めたのであった。

 

(翻訳)どうして誰もが羽生結弦を好きになるのか?② - kuppykuppy’s diaryに続きます